メガ実数では、超実数で扱う移行原理は採用しません。したがって、例えば\(sin(ω)\)のように、三角関数のメガ実数版は改めて定義する必要があります。
関数の定義域をメガ実数へ延長する
メガ実数では四則演算が定義されています。
したがって、通常の実数関数であっても、それが四則演算で定義できるものは自然とメガ実数へと延長することができます。
例えば、
\(f:\mathbb{R}→\mathbb{R} f(x)=x^2\)
という実数を定義域とした実数への関数を例で説明します。
この関数は、2乗するという演算で定義できていますから、自然と
\(f:\mathbb{R(ω)}→\mathbb{R}(ω) f(x)=x^2\)
と定義式をメガ実数体(\(\mathbb{R}(ω)\)へと延長することができます。
このように、有理関数はすべて自然にメガ実数へと延長することができます。
メガ実数での極限
メガ実数では数列を自然数からメガ実数への関数(写像)と考えます。
\(a:\mathbb{N}→\mathbb{R}(ω)\)
したがって、メガ実数の数列の添え字は自然数となります。
\(a_ω\)のような項はこの数列にはないということです。
ただし、この数列が四則演算で一般項が定義されている場合は、定義域を自然にメガ実数体に延長することができます。
例えば、
\(a_n=n^2+n+2\)といった数列を考えます。
具体的には、
\(a_1=4,a_2=8,a_3=14,…\)
といった数列です。
この数列の一般項はnの四則演算で定義されていますから、定義域(添え字)をメガ実数へと延長することが可能です。
すなわち、この数列は、関数
\(f(x)=x^2+x+2\)
に延長することができますので、\(f(ω)\)なども定義されます。
この数列\(a_n\)は無限大に発散する数列として取り扱われます。
関数\(f(x)\)は、x→∞にした時の極限を考えることができます。
\(f(x)\)はx→∞で発散すると考えますが、メガ実数ではもう一つの視点があります。
それは、\(f(x)\)はx=ωでの値が存在することです。
\(f(ω)=ω^2+ω+2\)といったメガ実数の値がきちんと定義されます。
同様に、x=ω+1の時や、x=ω^2の時の\(f(x)\)の値も定義されています。
\(f(ω+1)=(ω+1)^2+(ω+1)+2=ω^2+3ω+4\)
\(f(ω^2)=(ω^2)^2+ω^2+2\)
のようにです。
いずれにしても、この関数の値は無限大(すべての実数より大きい数)となっていますが、もう一つの特徴があります。
それは、当たり前ですが標準部分が実数である(存在する)ということです。
メガ実数の標準部分は、無限大パートや無限小パートを取り除いた数のことです。
かならず実数になります。
記号の使い方の正確性な説明が欠けていますが、これを記号で模式的に書くと
\(st(f(ω+1))=4\)
\(st(f(ω^2)=2\)
となります。
メガ実数では極限を求めるかわりに、x=ωでの標準部分でその代用を考えます。
標準部分は必ず実数になるので、代用した収束値を使うと、収束半径といったわずらわしい検証を省くことができます。
話を数列に戻すと、数列\(a_n\)の極限は無限大と考えますが、メガ実数ではx=ωの標準部分をその収束値として代用します。