メガ実数(megareal number)は、実数を拡大した超実数の一種です。
ここでは、メガ実数についての性質や表記についてまとめています。
メガ実数全体の集合からなる体をメガ実数体(略してメガ実数)と言います。
メガ実数の発想は、単純です。
無を表す数0に有を表す数1から自然数が生まれ、加法、乗法から、整数、有理数が、大小関係から実数体が、そして代数閉体を実現する複素数体に至ったところで数はある種の完成系として姿を現しました。
そこへ、新たに無限小を表す数1#1を追加してできたのがメガ実数体です。
メガ実数は数直線上に乗る数で、実数を拡大する数の体系です。
実数に対して複素数があるように、メガ実数に対してメガ複素数もありますが、メガ実数の主体は実数ですから、議論の対象は大小関係に大きくかかわります。すなわち、解析的な数と言えます。
メガ実数体の特徴
メガ実数の定義と記法
- メガ実数体は実数体を拡大した体です(実数を含みます)。
- メガ実数体はいわゆる無限小と無限大を含みます。
- メガ実数体は全順序集合です。従って標数は0です。
- メガ実数体は、非アルキメデス的な元を含みます。
メガ実数は実数と非常に似ていますが、非アルキメデス的です。これが実数との違いを大きくし、実数とは違った性質を引き起こします。
メガ実数はまだ発展途上です。したがって、至るところで不備があり、修正されるため、用語の定義が突然変わることもありえます。
特に、εという記号は乱用されます。厳密に議論するためには複数の意味のεを使い分ける必要がありますが、本質的な意味は共通しているので、文脈から使い分けた意味はくみ取れると思います。
メガ実数の実用系
メガ実数の原型は超実数(hyperreal number)ですが、実際のところは超実数とかけ離れており、指数部を有理数体に制限すれば、その実態は、レヴィ・チヴィタ体に似ます(若干違う部分もあります)。したがって、記号や用語などもレヴィ・チヴィタ体に準じたものを使いますが、違った定義を採用している部分もあります。レヴィ・チヴィタ体では無限小をdで表しますが、メガ実数ではεを使っています。
特に、連続や収束についてのアプローチはメガ実数版のε-Nとかε-δです。実数よりはるかに大きいメガ実数ですが、それでも発散するメガ実数数列がある以上、収束という概念を捨て去ることはできません。
メガ実数の用語
この節では、Kを全順序集合である体(基本は実数体)、Lを全順序集合である加群(基本は整数環)とします。
メガ実数は、KとLから、メガ単子、メガ結合、メガ有理数、メガ実数の順で構成され、研究用としてメガ級数、メガ整数の定義もしてあります。
KとLから作られたメガ実数はK#Lと表します。
メガ実数体K#Lにおいて、Kの事を係数体、Lの事を指数加群と呼びます。
メガ実数係数関数
メガ実数αの指数\(l\)の係数を\(co(α,l)\)または、\(α[l]\)で表します。指数\(l\)の係数がない場合には、co(α,l)=0とします。
すなわち、配列演算子[]は、係数を返す関数となります。
例
α=1+2#1-3#4とすると、
α[0]=1
α[1]=2
α[2]=0
α[3]=0
α[4]=-3
となります。
メガ実数の標準部分
メガ実数αの指数0の係数(成分)\(co(α,0)\)のことをαの標準部分と言い、st(α)で表します。
メガ実数αの正の指数を持つ全てのメガ単子の結合をαの無限小部分と言い、pl(α)で表します。
同様に、αの負の指数を持つメガ単子全ての結合をαの無限大部分と言い、mi(α)で表します。
すなわち、メガ実数αは三つの部分に分割されます。
α=mi(α)+st(α)+pl(α)
です。
mi(α)=0であるメガ実数を有限メガ実数と呼びます。
係数体のメガ実数体への埋め込み
係数体Kの元aをメガ実数a#0に自然に対応させることで、メガ実数体は、係数体を含んでいると見做します。
この自然な標準対応でa=a#0とみなし、a#0の事を単にaと表すこともあります。
メガ実数体は係数体を部分体として持っていると見なすことができます。
係数体は、K#{0}と同型になります。
メガ整数論
メガ整数は実数の中の整数に対応するものです。
メガ整数の実態は、順序が入った整数係数の多項式環です。
メガ整数は、多項式の性質がそのまま適用されます。
既約多項式に対応するメガ整数は、メガ整数における素数の役割を果たしますが、通常の(整数で使っている)素数と区別するため、これをメガ素数と呼びます。
メガ整数の研究テーマは整数論がどこまでメガ整数に適用できるかにあります。
係数を代数的整数に拡大した整数論も考えられます。
メガ単子の演算
メガ単子には加法と乗法の演算が定義されます。
a1#b1,a2#b2を2つのメガ単子とします。
加法
b1=b2の場合、(a1#b1)+(a2#b2)=(a1+a2)#b1
b1≠b2の場合、(a1#b1)+(a2#b2)=(a1#b1)+(a2#b2)
指数が同じメガ単子同士は係数をまとめることができます。
減法(加法における逆元を足す)
b1=b2の場合、(a1#b1)-(a2#b2)=(a1-a2)#b1
b1≠b2の場合、(a1#b1)-(a2#b2)=a1#b1+(-a2#b2)
通常の文字式の計算同様、マイナスの結合記号を導入し、a1#b1+(-a2#b2)の事を(a1#b1)-(a2#b2)と記述しても問題ないため、便宜上マイナスの結合記号も使用します。
マイナス記号は、単項演算子としても使用します。
すなわち、メガ単子a1#b1の加法における逆元を-(a1#b1)として表すということです。
すぐにわかることですが、-(a1#b1)=(-a1)#b1が成立します。
乗法
(a1#b1)*(a2#b2)=(a1*a2)#(b1+b2)
係数同士は乗算し、指数の部分は加法で計算します。
結合されたメガ単子の加法(減法)、乗法
加法、減法に関しては、結合演算と同じになります。
乗法については、それぞれのメガ単子を乗算して総和をとる形で定義します。
\(\displaystyle \left(\sum_{i=1}^n a_i\#b_i \right) \left(\sum_{j=1}^m c_j\#d_j \right)
\\ \displaystyle =\sum_{i}^n \sum_{j}^m a_i c_j\# \left(b_i+d_j \right)\)
メガ実数の次数
メガ実数を構成している係数が0でないメガ単子の指数の中で、最小の指数をそのメガ実数の次数と呼びます。
メガ実数の0
メガ実数で加法の単位元を単に0と書くこともあります。
任意の実数bに対して、0#bは0に等しいとみなします。
ですから、0には指数が定義できませんというか、全ての実数に対応した指数の0があると考えます。
メガ実数の1
メガ実数の乗法における単位元は、1#0になります。
これは、定義からすぐに導くことができます。
メガ実数の符号
0を除くメガ実数にも、通常の実数と同様に符号が定義されます。
メガ実数の符号は、メガ実数の最小次数の係数で決まります。
最小次数の係数が正の場合は、正、負の場合は負と定義します。
メガ実数の絶対値
メガ実数αに対し、絶対値|α|を次のように定義します。
\(|α|=\begin{cases} α & 0≦α の場合 \\ -α & α<0 の場合 \end{cases}\)
メガ実数の大小
メガ実数は、順序を定義することができます。ですから全順序体となります。
c#d-a#bが正の符号を持つ時にa#b<c#dと定義します。
メガ実数の位相
メガ実数距離
二つのメガ実数α、βに対して、距離d(α,β)を次の式で定義します。
\(d(α,β)=|α-β|\)
メガ収束
通常の収束という概念は実数Rに対して適用します。
メガ実数に対しても収束の概念を取り込みますが、ここがメガ実数の最大の困難で課題も多い部分です。
今のところののメガ実数の定義は下記の通りですが、今後変更になる可能性もあります。
例えば、メガ実数列\(α_n=1/n+1/n\#1\)は、0にメガ収束します。
対して、メガ実数列\(β_n=1/n+1\#1\)は、0にメガ収束しません。指数1で0#1に収束しないからです。
\(β_n\)は、\(1\#1\)にメガ収束します。
メガ実数列\(γ_n=1/n+n\#1\)は、どこにもメガ収束しません。発散します。
メガ実数列の場合は、有界であっても発散する場合があります。
また、メガ実数の極限は大小関係を維持しません。ここは実数と大きく異なる部分です。
ギガ実数
実数Rを使ってメガ実数を定義したようにに、メガ実数を係数と指数にもつメガ実数を定義することができます。
こうしてできたメガ実数は、R#Rの意味のメガ実数と区別するためにギガ実数と呼びます。
ギガ実数は、(R#R)#(R#R)と書かれます。
ギガ実数もメガ数直線上にあります。
メガ数直線
メガ実数体は、全順序集合ですので、個々のメガ実数を数直線の点に対応させることができます。
この数直線は、通常の実数数直線と同じ直線ですが、拡大や縮小機能を持たせた場合にはメガ数直線と呼びます。
メガ数直線は、いわゆる無限の大きさで引き延ばしたり、縮小することができます。
拡大率(縮小率)を数直線とあわせて記載することでメガ数直線ができあがります。
メガ望遠鏡は、数直線を無限大に縮小して、遠くをみることができます。
メガ顕微鏡は、数直線を無限大に拡大して、狭い範囲を見ることができます。
点が無限に集まれば線になるのか
メガ数直線を考えればすぐにわかりますが、数直線はメガ実数で埋まっています。といっても、ギガ実数はそれを上回る量で数直線上の点に対応します。メガ実数、ギガ実数を点としてみるのなら、点がいくら集まっても決して線になることがないということがよくわかると思います。
すなわち、点がいくら集まっても線になることはあり得ないと考えるのが自然だということです。
点の横には、常に無限の空間が広がっています。
このことから、点の数を数えれば、線の長さがわかるという発想は却下されます。
点はどれだけあつまっても、点の集合にしかならないということになります。
ここに無限集合の闇が潜んでいます。
なぜなら、ある条件を満たす点を集めるとそれは線と見做せるからです(私の主張と矛盾してしまうので線になるとは書きません)。
つまり、線は点を部分に持ちます。線から点を選ぶことができるからです。
なのに、線上にある点をいくら抜きとても線は消えることはありません。
線にどんだけ点が詰まっているのか想像することができないぐらい線の上には点が乗っています。
安易に無限の点で線ができているとはいえないぐらい線は点を持っています。
メガ実数のイメージ
おおざっぱにいって、メガ実数は、通常の実数に形式的変数ε(無限小)を追加した体です。
指数の部分を整数に限定すれば、メガ実数は有理関数体(有理多項式体、有理体式体)とみなすことができます(ただしメガ実数は、数であっても関数ではないので代入する操作はできない)。
指数の部分を整数に限定せず、実数にしているのは、メガ実数をできるだけ広く定義するためです。
また係数や指数に複素数を使わない理由は、大小関係(順序)を導入するためです。
メガ実数関数
メガ実数を定義域に持つ関数をメガ実数関数と呼びます。
メガ実数の定義は簡単ですが、それが仇になってしまうのが、メガ実数関数の定義です。
例えば、三角関数sin(x)ですが、これは実数に対して定義された関数です。
ですから、メガ実数を代入することができません。
実数関数を自然にメガ実数関数に拡大(延長)するために、実数関数を級数形式に展開します。
展開された級数をメガ実数関数として扱います。
こうすることで、形式的に実数関数の定義域をメガ実数にまで拡大することができますが、メガ実数を代入すると発散する場合が生じます。例えば、sin(ω)などです。
ここに課題が残っています。総和法の類似を使って解決しようと考えているところです。