このページでは、合成関数の微分公式を使うタイミングをわかりやすく説明します。
最初に結論ですが、合成関数の微分公式は、文字を置き換えた時に使う公式となります。
合成関数の微分公式とは
まずは、合成関数の微分公式の確認です。
合成関数の微分公式をみるだけでは、なんか使い方がよくわからないですが、実は使い方は簡単で、使いまくることの多い公式なのです。
これは、文字を置き換えて微分する方法です。例を通して使い方をマスターしましょう。いろいろな微分の公式がありますが、それらを組み合わせて使う時には、合成関数の考え方が必ず出現しています。
特に、指数関数、対数関数、三角関数などがでてくる式の微分では大活躍します。
合成関数の微分公式についての具体的な説明:合成関数の微分公式についての概要
合成関数の微分公式の使用例
最初に、指数関数eでの使用例です。すこし複雑な例で説明しますが、練習問題で簡単な例も載せました。
指数関数での使用例
問題:\(\displaystyle y=e^{2x^3+5x}\)を微分せよ。
このような問題がでたときは、指数関数(\(e^x))の微分公式を使うのは当たり前なのですが合成関数の微分公式も使う必要があります。
微分するときには、上記の公式を使うのですが、
よく、\(y’=e^{2x^3+5x}\)として間違う事があります。
正しい答えは、\(\displaystyle y’=e^{2x^3+5x}(6x+5)\)となります。
うしろに、\(6x+5\)がくっつくのです。
なぜ、うしろに\(6x+5\)がくっつくのかというと、実は合成関数の微分公式を使っているからです。
どういう風に合成関数の微分公式を使ったのかというと、指数部分の\(2x^3+5x\)の部分を別の文字に置き換えて指数関数の公式を使っています。
このように、なんらかの塊を別の文字に置き換えたときには、合成関数の微分公式を使ったことになります。
置き換えた文字をここでは、\(A\)としてみましょう。
すなわち、\(A=2x^3+5x\)と指数部分を\(A\)に置き換えます。
すると、問題の式は、\(y=e^A\)となります。
置き換えることで、指数関数の微分公式が使えるようになります。
逆に言うと、指数関数の微分公式は、指数部分がこのような単純な1文字の時にしか使えません。
\(e^A\)は微分しても、\(e^A\)そのままです。これが指数関数の微分ですが、ここでちょっと待ったがはいります。
「置き換えた文字を元に戻す!」これは当たり前ですが、これだけでなく、「置き換えた式を微分した式を、さらに掛ける」も必要なのです。
つまり、置き換えた文字をさらに微分してかけるというのが合成関数の微分なのです。
ここでは、置き換えた文字を\(A\)としていますから、\(A\)をさらに\(x\)で微分した式をかける必要があります。
\(A=2x^3+5x\)を\(x\)で微分すると、\(A’=6x^2+5\)となりますから、この\(A’\)を微分した式に掛けないと、正しく微分した答えにならないのです。
「式を置き換えてたら、置き換えした式の微分もかける」これが合成関数の微分公式の使い方です。
なれてくると、頭の中で文字の置き換えを行うことで、いちいち\(A=2x^3+5x\)と書かなくても一気に答えを導けるようになります。
答え:
\(\displaystyle y’=e^{2x^3+5x}(6x+5)\)
答え:
\(y’=4e^{4x}\)
解説:答えの係数に、4がくっついていますが、誤字じゃありません。\(4x\)を微分した\(4\)を掛けているからです。
対数関数での使用例1
問題:
\(y=(\log{x})^2-\log{x}\)を微分せよ。
\(A=\log{x}\)と置いて微分します。
\(A=\log{x}\)とおくと、
\(y=A^2-A\)で、
\(y\)を\(A\)で微分すると\(y’=2A-1\)
\(A\)を\(x\)で微分すると\(\displaystyle A’=\frac{1}{x}\)
なので、
\(\displaystyle y’=(2\log{x}-1)\frac{1}{x}\)
答え:
\(\displaystyle y’=\frac{2\log{x}-1}{x}\)
対数関数での使用例2
問題:
\(y=\log{x^2}\)を微分せよ
\(A=x^2\)とおくと
\(y=\log{A}\)
\(y\)を\(A\)で微分すると\(\displaystyle y’=\frac{1}{A}\)
\(A\)を\(x\)で微分すると\(A’=2x\)
よって、\(\displaystyle y’=\frac{1}{x^2}2x=\frac{2}{x}\)
答え:
\(\displaystyle y’=\frac{2}{x}\)
別解:
この問題は、\(y=2\log{x}\)と置いて微分することもできます。
この場合は、合成関数の微分公式を使わなくても答えがでます。
三角関数での使用例
問題:
\(y=\sin(x^2+1)+\cos(x^2-1)\)を微分せよ
\(A=x^2+1,B=x-2-1\)と置と、
\(y=\sin(A)+\cos(B)\)となる。
\(\sin(A)\)を\(A\)で微分すると\(\cos(A)\)
\(\cos(B)\)を\(B\)で微分すると\(-\sin(B)\)
\(A\)を\(x\)で微分すると\(2x\)
\(B\)を\(x\)で微分すると\(2x\)
よって、\(y’=2x\cos(x^2+1)-2x\sin(x^2-1)\)
答え:
\(y’=2x\cos(x^2+1)-2x\sin(x^2-1)\)
解説:
問題の式を二つの部分に分けてそれぞれ微分しています。
複合的な関数での使用例
問題:
\(y=(\sin(3x)+\cos(3x))^4\)を微分せよ。
\(A=\sin(3x)+\cos(3x)\)とおくと、
\(y=A^4\)となり、\(y’=4A^3\)
\(A’=3\cos(3x)-3\sin(3x)\)となるので、
\(y’=(\sin(3x)+\cos(3x)^3(3\cos(3x)-3\sin(3x))\)
答え:
\(y’=3(\cos(3x)-\sin(3x))(\sin(3x)+\cos(3x))^3\)
解説:
\(A\)の部分を求めるときにも合成関数の微分公式が使われています。
なれてくると、文字の置き換えを頭の中でやって、微分することができるようになります。
合成関数の微分公式の使用ポイント
- 式を置き換えた時には合成関数の微分公式を使用する。
- 置き換えた式毎に使用する。場合によっては複数回使用することもめずらしくない。
- 指数関数、対数関数、三角関数は引数部分を置き換えしないと微分できない。
初等関数の微分
- \(e^x=\exp(x)\)の微分は、\(e^x\)
- \(\log(x)\)の微分は、\(\frac{1}{x}\)
- \(\sin(x)\)の微分は、\(\cos(x)\)
- \(\cos(x)\)の微分は、\(-sin(x)\)
これらの関数を微分するときには、必ず引数部分(\(x\)の部分)を1文字の変数に置き換えて微分します。
この書き方では、\(\displaystyle y=e^{2x^3+5x}\)は、\(y=\exp(2x^3+5x)\)となります。