単項式、多項式の定義は意外にも難しいです。
結論からいうと、これらの用語は定義を覚えようとせず、これらの用語を使いながら慣れていくのが一番使いこなせる方法です。
小学生の時に、分数の定義を知ることなく、ひたすら分数計算をすることで分数の事が理解できるようになったように、多項式についても式の計算をひたすらすることができれば、必然的に多項式の概念が身につきます。
多項式とは
有理関数は多項式が分数の形式で表されたものです。
多項式とは、単項式の和でできた式の事です。
単項式とは、係数と変数を掛けた式の事です。
単項式の例
定義よりも具体的な例で覚えた方が解りやすいです。要は積だけでできた式のことで、足し算や引き算、割り算を使わないでできた式の事です。
単項式の例は下記のようなものです。
- (3x^2) …変数(x)と係数(3)でできた1変数単項式
- (-10x) …変数(x)と係数(-10)でできた1変数単項式
- (frac{2}{3}y^4) …変数(y)と係数(frac{2}{3})でできた1変数単項式
- (-xy^2) …変数(x,y)と係数(-1)でできた2変数単項式
多項式の例
簡単にいうと単項式が集まった式が多項式です。一つ一つの単項式は単に項と言います。
- (x^2+2x+1) …1変数多項式の典型的な例です。
- (x^2-y2) …2変数多項式です。
単項式・項・多項式・整式・有理式(有理関数)・分数式・定数項の違い
最初は教科書に書かれている定義で理解するのがよいと思いますが、実際には文脈の流れでそれぞれの用語がなにを表しているのか判断できるようになる必要があります。
多項式を作っている単項式の事は単に項とも呼ばれます。多項式は複数の項(すなわち2個以上の単項式)の和と定義する事もありますが、単項式と多項式を区別するメリットは殆どないと考えます。むしろ、区別することでかえってややこしくなります。
単項式は、多項式の特別な場合と考えることが多いです。すなわち、項が一つしかないことを強調するときにのみ単項式という用語を使い、通常は単項式も含めて多項式と呼びます。
多項式は整式と同じ意味で使われることがほとんどですが、なぜ整式といった別の呼び方があるのかというと多項式は整数に似ているからです。
整式は、整数に似た性質があり、有理式は分数(有理数)に似た性質があります。
また、有理数を分数と言うように、有理式の事を分数式という事もあります。
ある式の性質を強調するのに応じて呼び方を変えているわけです。
多項式は、項の個数が1つである事を強調したい場合に単項式、整数に対比して見立てているときには整式と呼び方を変えることで文脈が読み取りやすくなるというわけです。
多項式(x^2+5)の(5)のように、変数のかかっていない特別な項は定数項と呼ばれます。
有理式の事を有理関数という事もあります。式を関数と見立てることができるからです。
有理数とは分数の事なのですが、これは無理数と対比したときに有理数と言います。
実数を有理数と無理数に分けて考えた時、分数の事を有理数というわけです。
分数というと整数の比という意味が強く現れますが、有理数というと実数の中で考えているニュアンスがあります(絶対そうだとは限りません)。
係数や変数など文字の意味を文脈から区別するには
多項式の例として次のような表記をみることがあります。
(a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+…+a_0)
(a_0+a_1x+…+a_nx^n)
これは変数(x)に関する多項式の一般形です。
(x)だけを変数と見立てた場合((a_0,…,a_n)は変数みなさない場合)、この式は1変数多項式です。
(a_0,a_1,…,a_n)は係数と呼ばれるものですが、係数も文字で表される事があります。
見た目では、文字が係数を表しているのか、変数(不定元)を表しているのか区別できません。文脈で判断します。
もちろん例えば、(a_0)を変数とみたててその他の文字、(a_1,…,a_n,x)を係数もしくは定数項とみる観点も間違いではありません。
習慣的に変数は(x,y,z)の文字を使うことが多いのですが、それは絶対ではないという事です。
文脈から変数かどうかを判断するのはある程度の訓練が必要です。通常は文脈がわかっていれば、どの文字がどういう意味を持って使われているのか無意識に理解されます。
式を表面上の形だけで追っていくと文字が変数なのか係数なのか、はては定数とはなんぞやのような疑問だらけで数式がなにを表そうとしているのか理解しずらくなります。
それに対する私の秘訣は、式がでてきたときにかならず具体例を思い浮かべることです。
(a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+…+a_0)の式がでたとしましょう。その時、(x^2+a+1)や(x^3-1)などの例をできるだけたくさん思い浮かべます。
これが文脈を把握する秘訣です。
具体的な例で筋が通るかどうかを確認しながら読み進めるのです。
中には、写像の事を関数、関数の事を式と言ってる場合もありますが、具体例で確認していれば混乱は防げます(ぞれぞれの用語を区別して話す人もいれば、同じ意味として話す人もいます)。