式を因数分解するための基礎知識

文字式をが使えるようになって、文字の入った式の計算ができるようになって、最初にぶち当たる壁は因数分解でしょう。

式の展開と違って因数分解は、はるかに厄介です。

ある程度のパターンはありますが、それらのパターンを習得するには、多数の経験と練習が必要になってくるからです。

因数分解とは

式を因数分解するとは簡単にいうと、展開と逆の操作を行う事です。

これは正確な言い方ではありませんが、展開と対比することで因数分解をわかりやすく捉えることができるのでこう言っています。

逆に、式の展開についての知識がないと、因数分解の事を理解することはできません。

式を展開するとは、式からカッコ「(」や「)」を無くした形にすることです。

例えば、\( 4x(x-5) \)という式を\( 4x^2-20x \)の形に変形することを、式を展開すると言います。

この例の\( 4x^2 \)や\( -20x \)のように足し算のない式を項(こう)と言いますが、展開するというのは、このように、式を項の和の形にすることをいいます。

式の展開の形:

(項)+(項)+…+(項)

因数分解とは、式を式の積の形に変形することです。

因数分解の形:

(式)×(式)×…×(式)

通常、式の掛け算記号は省略して書きますが、ここではあえて掛けていることがわかるように、×の記号を使いました。

さきほどの例でいうと、\( 2x^2−10x \)を\( 2x(x-5) \)の形に変形することを因数分解と言います。

問題は、因数分解はいつもできるとは限らないということです。

例えば、\( 3x^2+5 \)のような簡単な式は複数の式の掛け算には変形できません。

このような式は因数分解できない式といいます。掛け算するためには最低でも2個の式が必要ですが、このような因数分解できない式は1個の式です。

因数分解は、このような因数分解できない式の掛け算になるまで分解することが必要です。

例えば、\( x^4-1 \)は、\( (x^2+1)(x^2-1)\)と変形できるのですが、さらに

\((x^2+1)(x+1)(x-1)\)

と変形できます。これ以上分解できないのでこれが因数分解の答えです。

上記の式の\((x^2+1)\)、\((x+1)\)や、\((x-1)\)のことを\( (x^4-1) \)の因数と言います。

因数分解の問題ではこれ以上、式の掛け算の形に変形できない因数になるまで分解します。

因数分解の厄介な点は式をみて、簡単に因数分解できるかどうかわからない点にあります。

式が長くなるほど、見た目で因数分解できるのかどうか、わかりにくくなります。

因数分解と素因数分解との関係

因数分解は、整数の素因数分解にすごく似ています。

名前も似ていますように、因数分解と素因数分解は似ています(が一般的には区別しあす)。

整数(通常は正の整数すなわち自然数のみを対象にする)を素数の積に分解することを素因数分解と言いますが、式を式の積に分解することを因数分解と言います。

これ以上素因数分解できない自然数を素数と言いますが、整数を素数の積に分解することが素因数分解です。

式をこれ以上分解できない積の形にするのが因数分解です。

因数分解できない式は、既約式といいます。

因数分解とは、素因数分解を式に適用したと考えることもできます。

実は、自然数を素因数分解するのは、かなり困難な事です。2桁や3桁の自然数ならそうでもないですが、100桁、1000桁の自然数を素因数分解するのはコンピュータを使ってもかなりの時間がかかります。

暗号化技術ではその性質をうまく利用しているほどです。

以上で、因数分解の簡単な説明を行いました。

厳密に因数分解を理解するより、いくつか簡単な例を通して因数分解の考え方を見た方が、はるかに理解がすすみますので、以下、簡単な例を通して因数分解の説明をしていきます。

因数分解の例題

1変数2次式の因数分解

式で使われている変数が\(x\)だけの場合です。

問題

\(x^2+3x+2\)を因数分解せよ。

\((x+1)(x+2)\)の式を展開すると、

\(x^2+3x+2\)となります。

展開する前の式は式の積の形になっていますから、上記の式を因数分解した答えは、\((x+1)(x+2)\)となります。

掛ける順序は気にしなくて大丈夫です。
つまり、\[(x+1)(x+2)\]を\[(x+2)(x+1)\]と書いても因数分解として正解です。

展開より因数分解の方が難しいですね。

いちおう、この形の因数分解の公式はあります。

1変数2次の因数分解の公式

\[x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)\]

この公式は、展開して左辺のような形になったら、右辺のように因数分解できるという公式です。

右辺と左辺を入れ替えたら、展開の公式そのものですから、因数分解の公式は展開の公式と対応しています。

つか、同じです。

公式としてかいたら、上記のような書き方になるのですが、この式のままおぼえるより、式の特徴を覚えることが秘訣になります。

左辺の式の特徴は、まず変数\(x\)の2次式で、しかも、\(x^2\)の係数が\)1\)となっている事です。

\[x^2+(****)x+(****)\]
\((****)\)の部分は数値

こういう形の式をみたら、上記の公式が使えないかをチェックします。

公式の右辺をみると、\((x+a)(x+b)\)の形ですね。つまり、この公式は右辺の\(a,b\)を求める問題と同じなのです。

この\(a,b\)の求め方が割と面倒なのですね。

なれれば、サクッとできるようになりますが、大袈裟にいうと、しらみつぶしに\(a,b\)に数を当てはめて\(a,b\)を求めるわけです。

まあ、コツがあって、定数項に着目します。

\(a\)と\(b\)をかけたら定数項になる、つまり、\(a\),\(b\)は定数項の約数です。

なので、定数項を素因数分解して\(a\)と\(b\)の候補を作るというのが、定番の方法になります。

\(x^2+3x+2\)の例でいうと、定数項は\(2\)ですから、\(ab=2\)となる\(a,b\)の組みを探します。

そのくみはこの場合、4パターンありますが、\(a\)と\(b\)を交換してできる組は同じ組み合わせと考えると\(a=2,b=1\)か、\(a=-2,b=-1\)の2パターンしかありません。

このいずれかが答えになっているか、展開して確かめます。

つまり、\((x+2)(x+1)\)を展開、\((x-2)(x-1)\)を展開して、もとの問題の式になるものが答えというわけです。

この問題は、因数分解としては簡単な方ですが、このように、因数分解は、いくつか候補をあげてた式を展開して確かめるというやりかたが、基本中の基本のやりかたとなります。

因数分解の問題になれるまでは、因数分解した結果を展開して合っているのか検証する作業を怠らないのが結果的には早く習得する道につながります。

因数分解は、候補となる式を作り、それを展開して検証する。これが基本!

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