行列のインバース(逆行列)とはコレの事

行列のインバース(逆)とは、逆行列(Inverse matrix)の事です。逆行列を求めるのは、かなり面倒です。

行列によってはインバースが存在しない場合もあります。

ここでは、行列のインバースを求める方法を説明します。

行列のインバース

逆行列の事を英語でInverse matrix(インバースマトリックス)と言います。

それで、逆行列の事を、単にインバースと言う事もあります。

行列\(M\)に対して、\(M^{-1}\)のように、右上に「-1」を書いて行列のインバースを表します。

このように、行列のインバースを指数で表現するのは、行列の指数計算と整合性が取れているためです。

行列のインバースが存在しない条件は、

  • 正方行列でない行列
  • 正方行列だが行列式が0である行列

のどちらかです。

逆にいうと、行列式が0でない正方行列にはインバースがあります

加法の逆元\(-M\)を「Mのインバース」という事はまず、ありません。混乱の元です。

\(M^{-1}\)は、「Mの逆行列」「Mインバース」「Mのマイナス1乗」といいますが、\(-M\)は「インバースM」とは言わないのです。

インバースの計算

行列のインバースの性質は、次の式で示されます。

インバースの計算

行列\(M\)のインバースを\(M^{-1}\)とすると、

  • \(M M^{-1}=E\)
  • \(M^{-1}M=E\)

が成立する。

ここで、\(E\)は単位行列。

つまり、\(M^{-1}\)は、\(M\)に右からかけても、左からかけても単位行列になります。

逆に、\(M\)に対して、左右どちらからかけても単位行列になる行列\(M^{-1}\)は、(存在するとしたら)この一つしかありません。

インバースの計算例

\(A,B,C\)を行列とします。

そこに、\(AB=AC\)という行列の関係式があったとします。

ここで、\(A\)のインバースが存在した場合、この式の両辺に左から\(A^{-1}\)を掛けて

\((A^{-1}A)B=(A^{-1}A)C\)

\(EB=EC\)

\(B=C\)

といった計算をすることができます。

\(A\)のインバースが存在しない場合は、このような計算はできません。

2×2行列のインバース

行列のインバースは計算が面倒です。ですので低次数の行列は公式を使います。

2次(2行2列の行列)のインバースは、下記の式で求めます。

2次の行列のインバース

\(M=\begin{pmatrix}a & b \\ c & d\end{pmatrix}\)のインバース\(M^{-1}\)は、

\(\displaystyle \frac{1}{ad-bc}\begin{pmatrix}d & -b \\ -c & a\end{pmatrix}\)となります。

\(ad-bc=0\)の場合は、インバースはありません。

代表的な覚え方は、「a,dをひっくり返して、b,cをマイナス」です。

分母の\(ad-bc\)を忘れないように注意します。

この公式は、丸暗記しても損はないので、しっかりと覚えましょう。2次の行列計算では、頻出します。

3×3行列のインバース

これも、公式を使います。

3次の行列のインバース

\(M=\begin{pmatrix}a_{11} & a_{12} & a_{13} \\ a_{21} & a_{22} & a_{23} \\ a_{31} & a_{32} & a_{33} \end{pmatrix}\)

のインバース\(M^{-1}\)は、

\(\displaystyle \frac{1}{\det(M)}\begin{pmatrix}a_{23}a_{32}-a_{22}a_{33} & a_{12}a_{33}-a_{13}a_{32} & a_{13}a_{22}-a_{12}a_{23} \\a_{21}a_{33}-a_{23}a_{31} & a_{13}a_{31}-a_{11}a_{33} & a_{11}a_{23}-a_{13}a_{21} \\a_{22}a_{31}-a_{21}a_{32} & a_{11}a_{32}-a_{12}a_{31} & a_{12}a_{21}-a_{11}a_{22} \end{pmatrix}\)となります。

ここで、\(\det(M)=a_{11}a_{22}a_{33}-a_{11}a_{23}a_{32}\\  +a_{12}a_{23}a_{31}-a_{12}a_{21}a_{33}\\  +a_{13}a_{21}a_{32}-a_{13}a_{22}a_{31}\)です。

\(\det(M)=0\)の場合、\(M\)のインバースはありません。

この公式を使えば、手計算でもインバースを求める事が可能です。

エクセルのセルに上記の式を埋め込めば、インバース計算の実装も可能です。

この公式は、覚えられなくもないですが、すぐに忘れてしまいます。

覚えるのなら、サラスの公式と、余因子行列の公式(一般次数のインバースでも使用)です。

一般次数のインバース

なんと、行列のインバースは、その行列の余因子行列を行列式で割れば求めることができます。

余因子行列については、いろいろ書かなればならないのでここでは詳しく書きませんが、行列の公式のなかでは最高峰の公式です。

符号調整に神経を使いますが、こんなにシンプルにインバースが表現できるのです。

感動ものです。

行列のインバース

n次の正方行列\(M\)のインバースを\(M^{-1}\)とすると、

\(\displaystyle M^{-1}=\frac{1}{\det(M)} \widetilde{M}\)

である。

ここで、\( \widetilde{M}\)の\(i,j\)成分は、

\(M\)の\(i\)行、\(j\)列を除いて作られる(n-1)次小行列の行列式を\(M_{i,j}\)とすると、

\((-1)^{i+j}M_{j,i}\)で与えられる。

(\(M_{i,j}\)でなく、\(M_{j,i}\)であることに注意!)

シンプルとはいえ、一般的な次数(4次以上)の余因子行列や行列式の計算は手に負えないです。計算機を使わないと計算を間違えるでしょう。

インバースの計算は、行列式の計算の連続です。行列式がサクサク計算できるのであれば手計算でもなんとかなります。

しかし、4次以上となると、行列式の計算が煩雑で、計算量は膨大です。ただ、決まった計算方法でインバースを計算できますので、計算機でインバース計算することは可能です。

特殊な形をしている行列は、いくつか公式があり、計算機に頼らなくても求める事が可能です。例えば、対角行列のインバースは簡単に求められます。

また、ガウスの掃き出し法など、手計算でもなんとかインバースを求める方法はありますが、今の時代、計算機(例えばエクセル)で計算するのが当たり前です。

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