無限大や無限小を表す数のまとめです。
無限に対するアプローチは一つではありません。いろんな考え方があります。
ここでは、実数体をRで表します。
R∪{-∞,∞}:素朴な実数拡大
∞は数ではありませんが、実数体Rに∞と-∞を追加して考える方法です。
欠点も多いのですが、もっとも普及している考え方で、ある意味自然です。
∞とは、すべての実数より大きな元としてとらえています。大きさが比較できる点を除いて数としては不完全です。∞には演算が定義されていません。
∞+∞=∞のような、一般の演算記号を使った表記もよくありますが、これは等式ではありません。大きい数と大きい数を足したら大きい数になるという意味であって、数の状態を表す式です。
R∪{∞}:リーマン球面
R∪{-∞,∞}と似ていますが、ここでの∞は無限遠点という名前がついています。幾何学的に数を捕えてできた∞(無限)です。-∞と∞を繋げた形になっています。
0に符号がないように、∞にも符号がついておらず、特別な扱いがなされます。
ただ、大きさの概念が崩れてしまうため、解析で使うには向いていません。
超実数(hyperreal number):ロビンソン
超フィルターを使って定義された実数体。いわゆる無限大を含んだ体。無限大は何個(無限個)もあり、無限大を含めて演算ができる点で画期的です。
ただ具体的なイメージがしずらく使いにくいという欠点があります。
An Infinitesimal Approach:H. Jerome Keisler
イメージしにくい超実数をわかりやすく説明した版。
具体的な計算方法などが豊富で学習しやすい啓もう書。
超現実数(surreal number): クヌース/コンウエイ
構成がユニークで、実数を拡大したというより、新しい概念の下でゼロから数を定義しなおした結果、無限大にも応用できてしまったという数です。
無限を扱う数として応用されることは殆どないように思えます。ただ、自然数→整数→有理数→実数といった数になんらかの拡張を加えていく手法とは異なり、無の状態から数を定義していくため、新しい概念の数が定義されるところが興味深いです。
R[ε]/(ε2):無限小拡大環
最近よく目にするようになりました。実数Rにi2=-1となる元iを追加して複素数体を作ったように、実数Rにε2=0となる元εを追加して作った環です。ゼロ因子をもつため、体にはなりませんが、体にきわめて近い環であるため、普通の数体のように取り扱えます。
無限小εがあるので、その逆元に対応する無限大の存在が示唆されますが、0で割ることが許されないようにεで割ることも許されていないため、無限大は排除されます。
p進数体、付値体(valued field):ヘンゼル
ちょっと異例ですが、見方をかえて通常の実数の大きさとしてみると、付値体の元は無限大といえます。
整数論で使われることが多いですが、非アルキメデス的である点で無限を含んでいると考えられます。
超実数も画期的でしたが、それよりも画期的で数の本質に迫っていると感じます。
R#R:メガ実数体(megareal number)
メガとは通常は100万を意味しますが、メガ実数のメガは単に大きいという意味です。
無限小拡大環を含んでいます。無限小拡大環ではε2=0でしたが、メガ実数ではε2はそのままε2です。
そのεの逆元もそのまま1/εとして存在します。
実数に無限大(もしくは無限小)を一個追加してできた体をできるだけふくらませた体です。
メガ実数は、このサイトの研究テーマとなっています。
メガ実数をさらに拡大したのをテラ実数といいます。
テラ実数もさらに拡大できて、その拡大は際限なく続きます。
これは、数直線にはいくらでも数が埋め込まれることを示しており、つまり数直線が数で埋め尽くされることがないこと、数直線は穴だらけなことを示しています。
コメント
[…] いろいろな無限大や無限小の考え方を示しました。 […]